理由があるかたちは美しい - 折紙がつなぐ芸術・科学・産業 シンポジウムで考える
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折り紙がつなぐ 芸術・科学・産業
先日夏休み中の8/11日東大で開催された「折紙がつなぐ芸術・科学・産業 2024」に参加してきました。
このシンポジウムは東大の舘ラボが中心になって、様々な折紙の可能性を芸術、科学、産業分野でもさぐっていこうという、国の支援を受けての「学術変革領域研究」の一環です。
当日は、今までは研究者しか参加しなかったようなシンポジウムが、もっと楽しく折り紙を愛する誰でも参加できる仕組みがたくさんあって、発表者の方々もとても面白い発表でした。
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アメリカ在住のロシア人研究者:エカテリーナ・ルカシェヴァ Ekaterina Lukashevaさんの作品
登壇者は、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者やグラフィックデザイナー出身でトポロジーを研究しているイタリアのアーティスト、折り紙作家、生物学者、洋服デザイナーなど、その道で折り紙構造を用いて仕事をなしえている人たちでした。
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いくつかを紹介すると、生物学者の近藤滋先生の発表は、「生物のどこが折り紙なの?」と思ったけれど、
カブトムシのツノがどのように出来上がるか?という研究で、これが、まさに折り紙によって(しわ)で出来上がっているという。
はさなぎの段階ではツノが突起していないそうで、脱皮する時に約100分位のすごいスピードであの立派なツノが出来上がる。
その謎をシワの折り紙構造で解明した。
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また、印象深かったのは、A-POC ABLE ISSEY MIYAKE デザイナー
宮前 義之のお話と実演。
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、布を織る段階で、熱を加えると一部の糸縮んで平面から立体をつくる構造の洋服を発表して、世界に衝撃を与えているけれど、
これが、人の創造性と、テクノロジーの融合であるということがとても分かった。
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洋服をつくるとなると、そこに素材があって、手でつくっていくことを基本にしているので、なかなか新しい考えが生まれない。
一歩外界に出ることで、新しい可能性を思いつくようになる。
というお話を宮前さんはなさっていました。
そして、美しいラインというものは、だれが見ても美しいと思えるラインがあって、それを追求するために、気の遠くなるような時間を使って試行錯誤をしているということでした。
このラインは、おそらく合理的な数学的な理由があるのかもしれない。
そこに、人間的な感性を持ちこむことで、完成される。
「感覚」や「感性」という言葉は、得てしてアートやデザインの中でとても重要なこととされるけれど、その背景にはキット数学的な理論があるだろう。
そのように思うのです。
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ゴミ箱も折り紙